新卒一括採用
新卒一括採用(しんそついっかつさいよう)とは、企業が学校を卒業した者(新卒者)を対象に、その時点でのみ一括して労働者として採用し、雇用する制度である。
新卒一括採用には功罪両面がある。
問題点
昨今では新卒一括採用制度が色々な社会問題を生んでいる。新卒時に、就職できないと一生やり直しが効かない事も多くあり、人材の使い捨てだという指摘がある。法政大学大学院政策科学専攻教授の小峰隆夫は、「少なくとも採用面での新卒主義は改めるべきだ。たまたま卒業時に景気が悪ければ就職できないという不平等があり、その時点ではじき出された年齢層がそのまま社会で滞留してしまう」と述べる。 学習院大学法学部教授の数土直紀は、新卒一括採用が終身雇用とセットになると閉鎖的な労働市場を生み、そのため再就職が困難な社会になるため、理由なき服従を産み出す結果になっていると指摘する。また東京大学教授で社会学者の本田由紀は、新卒一括採用から学習成果と職務内容との適合性を重視して、卒業後に採用選抜を行う方式へと変わるべきだと主張している。内閣府のホームページの国民生活白書には現在の新卒者の採用制度についての問題点が挙げられている。
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上に挙げられた問題以外にも、新卒一括採用制度は多様な問題を有している。氷河世代と呼ばれる世代には、新卒時に就職出来なくて、そのままずっとやり直しが出来ずに、フリーターなどの不安定な仕事に就かざるを得ない者が多くいる。OECDの報告によると、2007年の日本における15?24歳の長期失業率は21.3%と、OECD平均の19.6%を上回った。5年前に比べやや改善したものの、依然として10年前の18.2%を上回っており、若者は定職確保が困難になっていると感じていると分析する。報告は、日本の派遣労働について低い収入、低い社会保障水準で技能・キャリア開発の可能性もほとんどないと厳しく指摘し、若者を助けるために、日本にはもっとできることがあるのではないかと強調する。
また就職活動の早期化が顕著になり、学生の大学での勉強が疎かになってしまう弊害が生じている。内定を出す時期が早いため、企業の業績の悪化などが原因で内定取り消しという事態が、全国で数多く起こっている。
脳内科学者である東京工業大学大学院連携教授、茂木健一郎のクオリア日記には、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)工学部中村修二教授、東京工業大学伊賀健一学長との東京工業大学大岡山キャンパスでのシンポジウムが以下のように記述されている。
たとえば、大学3年の今頃から就職活動を一斉にして、それを何の疑問に持たない。 中村修二さんは明快である。 「そんなもん、年齢や経歴による就職差別だから、訴訟すればいい」 まったくその通りで、企業が何の合理的な根拠もなく、いわゆる「新卒者」だけに 就職を限っているのは、アメリカ的な感覚で言えばただちに訴訟の対象となり、 そして企業は負けるのだろう。 何よりも、本当に優秀な人材を採用するという企業努力を怠っていることになる。 (以下略)
やり直しが利かない社会を生むので、秋葉原通り魔事件で見られるような社会に対して恨みを抱く者が現れるなど多様な問題が生じ、時代に合わなくなってきた感がある。既卒者には職業訓練が提供されず、転職者と同様の扱いになってしまうので、既卒者も十分な職業訓練が受けられるような制度の構築が望まれる。
利点
2006年の内閣府の調査によると新卒一括採用する上位2つの理由は、「社員の年齢構成を維持する」「他社の風習に染まっていない人材確保」であった。企業側としては、新卒一括採用により愛社精神と忠誠心を植えつけることができるため、ジョブホッピングのリスクを回避することのできる有用な手段であり、儒教の影響により上下関係の意識の強い日本の産業構造かつ社会構造に適合したシステムとして重宝される。また、採用された新卒者とっても、新卒一括採用というシステムで採用されることによって年功序列と終身雇用の道が開け、それで得られるしっかりとした社会的信用によって住宅ローンを組む際の審査が通りやすいなど将来の人生設計が確実に立てられるようになるため、生活のすべてにおいて圧倒的に有利となる。